浮かび上がる、沈み込む。

人生的にも感情的にも浮き沈みが激しいです。どちらかというと、溺れてると言った方が正しい。

飛び降り自殺未遂、の手前までいった話。

 今日、急に「死ななきゃ、死なないといけない」と思った。死にたいというより、自分の中で突然下された決定事項だった。

 父が亡くなってからずっと、漠然と死にたいとか消えたいとか思っていた。でも、今死んだら弟や妹に迷惑を掛けてしまうからダメだ、車のローンも残っているし、あの子達に私の葬式なんてあげられる訳がないし、とも思っていた。けれど同時に、ベッドの上で、このまま何も飲まず食わずでいたら死ねるかな?と考えたり、あーもう霞みたいにスッと消えて自分なんかいないことにならないかな、他人の記憶からも消え去りたい、と思っていた。そしたら今日突然、死ななきゃ、死のう、と強い衝動に駆られた。

 どうやって死のう、等とは全然考えなかった。私は今から死ぬんだ、という気持ちだけで車を走らせて、地元で自殺の名所として有名な橋に向かった。そこで飛び降りるのが一番良いと思った。一番良いと思ったというか、それが自然なような、当たり前のような気がした。高所恐怖症の癖に何故それを選択したのか自分でもよくわからない。最近飛び降り自殺を図る夢を2回くらい見ていたのでそのせいかもしれない。
 道中、何度か涙が出てきたけど何の感情もなかった。両目からスーッと頬を伝っていくだけで、別に悲しいとかつらいとかも感じなくて、なんで泣いているのかもよくわからなかった。

 けれど、その橋を自殺現場として選んだのは失敗だった。

 橋の入口付近の駐車場に着いて車をとめようとしたら、観光バスが2台とまっていた。一般車両も何台もとまっていた。その橋は山間にかかる大きな橋で、この時期は紅葉の名所として観光客が訪れる。それを完全に失念していた。
 とりあえず橋に向かって歩いていったら、長い橋の両脇の歩道に人がたくさんいた。たくさんってほどでもないかもしれないけれど、私からすればこれだけ人がいるのは邪魔だった。午後4時過ぎだっていうのにみんな帰らないの?寒いし早くお帰りよ、と少し苛々した。

 橋の上を歩きながら、時々立ち止まって欄干から渓谷を見下ろしてちょうどいいポイントを探した。色づいた木々に陽が当たって綺麗だったけど、それよりも風がめちゃくちゃ冷たくてずっとカタカタ震えていた。肩に掛けていたストールを上半身に巻きつけたけれど、とにかく寒かった。山は寒い。
 歩いては下を見て歩いては下を見て、を繰り返し、そのうち地上までの距離が一番遠いポイントに着いた。その高さ、122メートル。ご丁寧に歩道のブロックに書いてあった。下を覗き込むと川が流れていて、邪魔になりそうな木々はなかった。陽の当たる橋の上とは違って、山々に光を遮られた谷間は薄暗い。122メートルと言うと大体ビルの30階くらいらしいからすごく高いはずなのに、思ったより距離が近い気がした。高所恐怖症なのに何故かそのときは全く怖くなかった。

 しばらくそこから渓谷を見つめていた。

 死ぬのは全然怖くない。怖くないのだけど、周りに人が多すぎる。隣で韓国からの観光客らしき人たちがめっちゃ写真を撮ってはしゃいでいる。なんか知らんけど、チョア〜って何回も言ってる。ここの景色を随分とお気に召したようですが早くどっか行ってくれませんか。
 周りを見回してみたら、一眼レフをさげたおっさんとか自撮り棒持ってる若い女性2人組とか、おそろいのスカジャンを着ているカップルとか、各々が橋の上から紅葉を楽しんでいた。
 そのとき思った。今私がここから飛び降りたら、この隣の韓国人の素敵な観光の思い出が、目の前で女が飛び降り自殺したっていうトラウマに変わっちゃうんじゃないか、と。綺麗な景色を楽しんでいる人たちに水を差してしまうんじゃないか、と。
 そう思ったら、今飛び降りるのはダメな気がした。水を差してしまうかもしれないのが申し訳なかった。全然関係ない人たちに不快な思いはさせたくない。人がいなくなってからにしよう、それまで車で待っていよう。寒いし。
 そうして車に戻って、ペットボトルの水を飲み、積んでおいたブランケットに包まってシートを倒して横になった。窓の外を眺めていると、車が駐車場から出ていったかと思えばまた違う車が入ってくる。いつになったら人がいなくなるんだろう。そう思って目を閉じた。

 目を開けたら10分くらい経っていた。
 それでもまだ車は何台もとまっていて、橋の方に人が歩いていくのが見えた。その頃にはもう、自分を突き動かしていた死ななきゃ!という強烈な衝動は薄らいでいた。
 なんか馬鹿みたい。無様だな、と思った。
 あんなに死ぬつもりで1時間も車を走らせてきたのに結局実行出来なくて、何をやっているんだろう。何故あんなに強迫観念的に死ななきゃいけないと思っていたのだろう。考えても考えてもわからず、少し頭が痛かったので、とりあえず私は抗不安薬を服用し、そのままそこでしばし眠った。
 目覚めると辺りは暗くなっていて、駐車場には私の車だけが残されていた。その橋は夜は心霊スポットとしても有名で、なんだかほんのり怖くなった私は橋の方に向かうこともなく車から降りることもなく、そのまま家に帰った。

 というわけで自殺未遂どころかその手前で終わってしまった無様な私ですが、6時間以上経過した今も何故あんなに死ななきゃいけないと思っていたのかよくわかりません。ただとにかく「衝動」としか言いようがない。頭も心も置いてけぼりになるような衝動。けれどそのピークを一瞬でも逃すと、それは薄らぐようです。いやわからない。私の決意が甘かっただけかもしれない。でも決意した訳じゃないんだよね。衝動に駆られて動いただけだから。人間ってよくわからないね。

 だから多分、何らかの衝動に駆られたときには邪魔になるものが一切ない状況を用意するか、ピークを絶対に逃さずひとおもいに行動するのが重要なんだなと感じた。逆に言えば、衝動を抑えたかったら誰かに、何かに邪魔してもらうか、ピークをとりあえず10秒耐えてみるかすればいいと思う。私の場合は人がいなくなるまで、と10分待ったけど。
 あとは水を飲むっていいかもしれないなと思った。水じゃなくてキャンディとかクッキーとかでもいいけど、口にモノを入れて飲み下すと一瞬冷静になります。いやでもこれはもしかすると私だけかもしれないので、もしこの記事を見た方で、衝動を抑えようと思って水を飲んだけどちっとも効かなかったじゃねーかこのヤローって方がいらっしゃっても私を責めないでください。

 とりあえず今思うのは、この衝動がまた来たらどうしようかなってことなんですが、次に病院でカウンセリングを受けるときに臨床心理士の先生に相談することにして今日はちょっともう考えるのも面倒なので寝ます。おやすみなさい。