浮かび上がる、沈み込む。

単なる日記、あるいはセルフカウンセリングの一環。

Jewelって、随分と思い切った名前だな。

 掲題のJewelというのは、私の好きなシンガーソングライターの名前である。
 Jewel……日本語だと「宝石ちゃん」。ものすごい破壊力だが、英語圏だと俗に言うキラキラネーム扱いにはならないのだろうか。まぁ、CrystalちゃんやJadeくんがいることを考えれば、割りと普通なのかもしれない。
 ただひとつ言えるのは、この人の歌唱における表現力は宝石並に貴重で素晴らしいってこと。マジで尊い。
 Jewelのオリジナルアルバムはほぼ持っていて、ひとつひとつのアルバムの中に(個人的には)結構捨て曲(だと感じる曲)もあるのだけど、表現力という点に絞って聴くと、その多様性に驚かされる。と、いうわけで、そんなJewelの曲の中から、私が好きな曲(と、その歌詞の中でも好きな部分)をピックアップして、つらつらと書いていきたい。

※ちなみにところどころで引用する歌詞は、日本版CDに付いてる対訳を参考に、私の貧相な英語力で訳した意訳です。(なぜって、そのまま載せちゃうと著作権に引っ掛かるんじゃないか、ってビビったからです。)日本版が発売されなかったものに関しては、完全にニュアンスで訳しているのであしからず。
 それから、あくまでオリジナルアルバムとして何枚目かを数えているので、クリスマスコンピレーションアルバムとか童謡カバーのアルバムとかは数に入れてないです。ご了承いただきたい。




  • Foolish Games(1st album"Pieces of You"収録)

 この曲はアルバムヴァージョンとシングルヴァージョンがある。個人的には圧倒的にアルバムヴァージョンの方が好き。ちなみにYouTubeで見られるMVはシングルの方です。(このMVに3人の怪しい女が出てくる。なんとなくシェイクスピアの「マクベス」の魔女を想起させられる。)
 しょっぱなから、もの悲しい感じ全開の曲。ピアノの音が寒々としていて、切なさを掻き立てられる。秋から冬への変わり目くらいの温度感。呼吸したとき、鼻の奥が風の冷たさで痛むような。
 内容は、端的に言うと大失恋の歌。だってもうサビの歌詞が、
「こんな馬鹿みたいなゲームが私を引き裂いて
 あなたの心無い言葉に この心は壊れていく
 あなたのせいでボロボロになっていく」

って、一体どれだけ傷つけられてるの。
 しかも、この「あなた」っていうのが厄介なヤツで、雨の中コートを脱いで突っ立ってるわ、髪はボサボサだわ、芸術について語るわ、真面目にお金を稼ぐことの意味を説教してくるわ、なんかよくわからない変なやつである。
 ミステリアスな男に惹かれて、結局ダメになる女。いるいる。よく居る。
 そして、
「ごめんなさい、あなたのこと
 他の誰かと勘違いしていたみたい
 優しい人だと思ってたし
 私とよく似ている人だって思ってたのに」

 うん、そりゃあ往々にしてそうなるわな。当然の帰結。
 でも多分、拗れた恋愛の終わりなんて、大体こんなものかもしれない。相手を好きだったことさえ、「ただの勘違い」だったことにしなければ、つらくて仕方ないのだ。「勘違いしてた私が悪いのよ、馬鹿だったのよ」って、当てつけが半分、相手をこれ以上嫌いになりたくがないための自責が半分。この部分の歌い方が、泣き出しそうになっているのを堪えているようで、すごく胸を打たれる。
 バラードが好きな人には、是非聞いてほしい1曲。


  • Who Will Save Your Soul?(1st album"Pieces of You"収録)

 ファーストアルバムのファーストトラック。でも実は、セカンドアルバムのボーナストラックとして収録された、ライヴヴァージョンの方が好き。ライヴヴァ―ジョンなので、音質ははっきり言ってカスなんだけど、大サビの声の伸びが半端ない。あと、ところどころ声が掠れ気味になるのも、また良い。

 私は小学生の頃から鬼束ちひろの歌が好きで、彼女がJewelに影響されて歌手になったと知ってから、「Jewelの歌を聞いてみたい!」と思っていたんだけど、当時中学生の自分が単独で行動出来る範囲に洋楽のCDを豊富に取り扱っている店がなくて。14歳の誕生日に、友達が偶然中古で見つけてプレゼントしてくれたのがセカンドアルバムだった。
 最初はJewelの歌の良さが全然わからなくて、期待値が上がっていた分ガッカリしたけど、ボーナストラックだけは何故かすごく気に入って、ずっとそればかりリピートしていた記憶がある。

 社会風刺を交えながら自己救済について歌っていて、出だしの
「テレビの中ではあなたのために生きている人たちが
 自分はあなたより優れている と言い放ち
 あなたもそれに賛同する」

という歌詞と、2番のサビ前の、
「私たちは花の数ほど多種多様な神様に祈り
 宗教を友達と呼ぶけど
 魂の救済ばかりに気を取られて
 始めることを忘れている代償を
 神様に請求されるんじゃないかと恐れてる」

という歌詞が好き。

 曲名もそうだし、サビでも繰り返し歌われる、「あなたが自分で救わないなら、一体誰があなたの魂を救ってくれるのよ?」というメッセージ。
 都合の良いときだけ神様にすがったり、悪いことがあればすぐ神様のせいにしたりするもんじゃないよ、と。神様になんとかしてもらおうとするんじゃなくて、自分でも少しはなんとかしようという努力をしろよ、と。初詣にかこつけて友達といろんな神社に受験の合格祈願に行く暇あったら勉強しろよ、と。そういうことですよ。


  • Cleveland(3rd album"This Way"収録)

 この曲の何が良いって、メロディーとか編曲とかはどうでもいいんですよ。もう本当、どうでもいい。(あ、ちなみに曲調としてはカントリーロックポップです。多分。)
 とにかく、ブリッジの部分の歌詞。これに尽きる。

「私からあなたまでは たったの1インチ」

 1インチは2.54センチなので、めっちゃ近い。ほぼほぼ密着してるようなもの。で、この次の歌詞が、

「どんな縮尺の地図を使うかによるけどね」

 これ、もう、やられたー!って思った。近いと思わせて、一気に距離を開かせる、この技巧。とにかく、たった2行のこの歌詞が素敵過ぎる。
 この曲に関して言いたいことは以上です。はい。


  • Stand(4th album"0304"収録)

 前3作がカントリーを基調としたロックやポップスで構成されているのに対して、このアルバムはいきなりダンスミュージックに作風が変わって、賛否両論……というか、どちらかというと否定的な意見が多かったらしい。私は、これはこれで面白いと思うし、このアルバムに収録されている曲の歌詞を上手く表現するには、これが最善だったと思う。
 正直な話、Jewelさんだって、いつも内省的な歌ばかり歌っていたら退屈だと思うんですよ。たまにはセクシーさを全面に押し出した曲だって歌いたいし、難しいことは無しにして単純に「うぇーい!たのしー!」みたいな曲だって歌いたいでしょう。それに、相変わらず社会風刺を織り混ぜた歌詞や内省的な歌詞は健在だし、それをダンスミュージックに乗せるっていうのがまた良いじゃないですか。

 これはまさにそういう曲。
「街角の店に入ると
 万引きしようとしている警官がいて
 拳銃を持った老婆に出会う
 ほら 英雄は逃げ出そうとしている
 見かけどおりのものなんて何にもない つまり
 世の中 汚いものばかりじゃないけど
 綺麗なものばかりでもないってこと」

 本当そうだよねぇ……当たり前のことなのに、こういう真理を人は忘れがち。
 2番の歌詞もなかなか過激。中でも、
「市長は現金を持ち合わせていない
 売春婦と大麻を買うのに使っちゃったんだってさ」

 この部分、よく検閲通ったな、と思う。意外とアメリカはこういうブラックジョークもアリなんだろうか。アメリカよりイギリスの方が恐ろしいほどシニカルなブラックジョークをかますイメージがあるけど。

 あと、好きなのはサビの中の次の歌詞。
「残念だけど 人生がもたらす苦痛は
 誰のせいにも出来ない」

 これは"Who will save your soul?"の内容とも通じてるな、と。自分の人生における苦痛は、他の誰でもない自分が背負うしかない。だけど、必ずしも自分が悪いから酷い目に遭うって訳でもない。だからと言って、それは誰かのせいでもない。誰のせいでもない。誰のせいにも出来ない。
 つらい。本当につらい。でもみんな、そうやって生きていくしかないんだよな、と改めて思い知らされた後でぶつけられる、
「私たち一緒なら 立ち向かっていくことも出来る」
ということば。「ひとりだけど、ひとりじゃないんだよ。」ってことなんだろうなぁ……と、私は解釈している。


 この曲の良さは、ただひたすらにエモーショナルでセンチメンタルでメランコリックでメロウなところ。あと、Jewelの声が可愛い。
 歌詞?正直よくわからないです。歌詞なんかどうでもいいんだよ。考えるな、感じろ。
 ……いや、私は結構、抽象的で隠喩バリバリの歌詞でも違和感なく聞く方ではあるんだけど、これはなんか、失恋の歌ともとれるし、上手くいっていない遠距離恋愛の歌ととれなくもないし……もう、ああだこうだと変に解釈せずに聞いた方がいいのではないかと思う。
「朝になると 思うの
 あなたはどこにいるのかな
 誰と話しているんだろう
 あなたのいる場所では日が昇ったのかな って
 朝になると 恋しくなるの
 私の肌に触れるその手が
 あなたがいないと このベッドは広すぎる
 ねぇ神様 どうしよう?
 私は1000マイルも離れて
 あなたの隣に横たわっている」

 試しに1番だけ歌詞を書いてみたけど、他の人はどう思うんだろうか。気になるところ。


  • Stronger Woman(6th album"Perfectly Clear"収録)

 5枚目のアルバムからゆるやかにカントリー路線へ回帰して、穏やかな曲でまとめられた6枚目のアルバムの、ファーストトラック。女性への純粋な応援歌。
 歌詞ははっきり言って安直。ストレートで、何か特別なことを言っている訳でもなく、良くも悪くもわかりやすい。
 MVの方にも、歌詞の内容がとってもとってもわかりやすく反映されている。各国の各時代の衣装に身を包んだ女性たちが、窮屈なコルセットや顔を隠すベールを脱ぎ捨てていく。Jewel自身も、ドレスにつけられた錠を外し、つけまつげを取って、「自己解放した飾らない私」としてステージの上で歌う。
 普段はストレートな歌詞の歌より、多少難解だったり、やたら内省的だったり、情景が頭に浮かぶようないかにも叙情的な歌詞の曲ばかり好んで聞く私だけど、なぜかこの歌にはものすごく救われた。
 落ち込んで落ち込んで、どうしようもなく消えたくなったとき、このストレートなことばが静かに胸に沁み入って、少しだけ元気を取り戻した。空腹さえ感じられないくらい沈んでいた心が、ゆっくりと浮上していくような。

「他の誰よりも自分を愛していくの
 誰に見えなくたって 私は信じてる
 自分の中の強い女性を
 自分自身の親友になって 最後まで離れない
 もう自分を見失ったりしないわ 二度とね
 だって 私の中には 強い女性がいるから」

 女性という性は、時に足枷となるけれど、それを含めて自分というものを受け入れ、人生を全うしていこう。

 小さい頃、男だったら良かったのに、と何度も思った私には、耳が痛いメッセージ。でも、私が私として生まれ落ちたからには、女性という性も含めて生きていかなきゃいけない。それはある意味とても不幸だけれど、ある意味ではとても幸運なことなのかもしれない、と、今は思う。


  • Ten(7th album"Sweet and Wild"収録)

 このアルバムを買ってすぐ、車で流し聞きをしたとき、ジャケットの裏の曲名を見て「10って、なにが?」と思った記憶がある……。
 恋人(または配偶者)と喧嘩して仲直りする、という内容で、35歳かそこらでこの歌詞を書いて歌えるJewelは、とてもチャーミングな人だなと思った。
 語弊があるかもしれないけれど、決して年齢がどうだこうだと言っている訳じゃない。この歌にはいくら歳を重ねても消えない少女性みたいなものがあって、それを臆面もなく歌ってしまえるのが、本当に可愛いな、と。こういう人を本当に可愛いというのではなかろうか。私にはないね、こういう愛嬌。

「恋愛なんて簡単だ って言ってのける人は
 恋に落ちたことなんてないはず
 それは時に地雷となって
 一歩踏み違えると爆発してしまう
 ちょっとしたひとことや表情が
 隠された導火線に火をつける
 激しく怒っているとき
 自分のしたことに気付くのは難しい
 後悔するってわかっていることを
 やるのは簡単なのにね
 立ち止まって 考えて 離れる前に10数えるの

 1、まだあなたのことを憎んでる
 2、3、まだ離れたいと思っている
 4、ドアを探して
 5、そしたら あなたと目が合って
 6、深呼吸して  7、一歩戻って
 8、9、なんでこの喧嘩を始めたのか分からなくなる
 そして10数え切る前に
 またあなたの腕の中に戻る」

 なんなのこれ。やたら可愛いな。
 しかし何度読んでも自分の中にはない感覚すぎて、どうしようねこれ。
「後悔するってわかっていることをやるのは簡単なのにね」。いやもう、本当それですよ。怒りに任せてひどいことを言っちゃうのなんて日常茶飯事。改めなきゃな、って思う。改めるような相手もいないけれど。

 このあと、
「感謝の気持ちを抱いていないものは
 失くしてしまいやすいの
 だけど あなたと私には
 そんなこと起こってほしくない」

という歌詞の後に、「Better count my blessings」と続くんだけど、ちょっとここの訳し方がイマイチしっくり来ない。ただ、おそらく意味としては、「私があなたのためにしてることに気づいてね。そういうことを見落とさないでね。あなたが私といて楽しいとか安らぐな、って思う気持ちを忘れないでね」ってことなのかな、と。
 夫婦が仲睦まじく過ごす秘訣は、相手を尊重すること、相手に感謝することだとよく言う。Jewelがこの曲を書いたのが、結婚する前なのか後なのかは分からないけれど、結婚後に書いたのだとしたら、この歌は旦那さんへのメッセージなのかもしれない。そう考えれば、ますます可愛いな……
 とりあえず、大切な人や友達と、仲違いしてしまったときには、この歌を思い出そうと思う。




 以上7曲。他にも好きな曲はあるのだけど、スマホで入力することの限界がかなり初期の段階で見えてしまったので、出来るだけ絞った。(フリック入力で長文打つの、想像以上にしんどい……。)しかも、実は友達にちょうどCDを貸している最中だったので、意訳なんかはかなり曖昧なところが多いです。ごめんなさい。
 上に挙げた曲は、全部YouTubeさんで検索すれば聴けるはずなので、もし少しでも興味がわいたら、聴いてみてほしいです。いつか、鬼束ちひろの歌についても書きたいなと思う。好きな曲が多すぎて、腱鞘炎になりそうだけど。